アサギマダラ

アサギマダラ

 蝶は世界中で約2万種いるといわれている。日本にはそのうち230種あまりが生息している。そしてわが村には現在約80種の蝶が確認されている。シジミ蝶やセセリ蝶の仲間を専門に調べれば、まだいるであろうと思われるので最終的には100種近くいるであろうと考えている。東北の一山村に過ぎない東成瀬村だけの数字と考えれば、堂々の数である。
  この蝶の仲間には、ここに土着しているのではなく西のほうから気流に乗ってやってくる、いわゆる「迷蝶」と呼ばれるものがいる。わが村では数年前に,東北にいるはずのない「ツマグロヒョウモン」という蝶が見つかったことがある。しかし迷蝶であるが故、その後は一度もお目にかかったことはない。
  しかし今日紹介するアサギマダラという蝶は、西のほうから気流に乗ってやってくる蝶でありながら、迷蝶ではない。春に北上して秋には南下をする「渡り蝶」なのである。特に須川、焼石地区一帯では、この季節によく飛来する。
  アサギマダラは大型の可憐な蝶である。ゆっくり飛翔する様は、幻想的でさえある。薄暗いブナの森の沢筋に羽を休めていることが多いが、そののんびりした様子とは裏腹に、驚くとあれよあれよと言う間に天高く舞い上がり、やがて空の中に消えてゆく。アサギマダラの生態はまだよく解明されていないらしく、それが蝶を愛する人々の中でも、ひときわ人気のある理由なのかもしれない。遥かな旅の途中に、羽を休めるために訪れるアサギマダラ。今年もわが村へようこそ。

文/柴田 喜久子


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