サルナシ

サルナシ

 収穫の秋である。今回は木の実を題材にしようと思ったのだが、その種類は膨大である。ヤマボウシ、アキグミ、ナツハゼ、ヤマナシ、ウワミズザクラ、ガマズミ…木の実だけで1年分の原稿が書けそうである。本当に迷った。そして、その中で「サルナシ」を選んでみた。
  サルナシと言っても馴染みのない方も「コクワ」或いは「シラクチ」と言うと、あぁ!と思い出すと思う。マタタビ科の落葉つる性の木で、村のあちらこちらの木に絡み付いている。雄の木と雌の木があり(雌雄異株)、なかなか実をつける方にはお目にかからない。サルナシの語源は、「猿が好んで食べる梨に似た実」と言う説と、「猿がこれを食べるとき我を忘れてしまうので、猿で無くなることから猿無し(サルナシ)」という説があるようだ。ただおもしろい事に、方言で呼ばれる「シラクチ」と言うのは、アイヌ語でマタタビのことをsira-kutchi(シルクッチとでも発音するのだろうか)と言うらしく、それが変化して「シラクチ」となったと考えられる。と言うことは、サルナシよりもシラクチのほうが正しい呼び名のように思える。ちなみに中国に「シナサルナシ」と言う同じような木の実があり、これをニュージーランドに持ち帰って栽培したのが有名な「キウイ」という果物である。何のことはない、原種は我々の側にあったのだ。
  木の実はキノコや山菜に比べてどこか人気がない。と言うのも、木の実を夢中で採って食べたのは、本当は子どもたちであった。子どもたちの格好のおやつであった木の実が、今は見向きもされない。時代の流れといってしまえばそれまでだが、自然食ブームの中、もっと利用されていいはずだ。なぜならサルナシの栄養価は非常に高く、ビタミンCに至ってはレモンの10倍もあるそうな。タンパク質分解酵素を大量に含み、疲労回復、滋養、強壮、整腸、補血などの効能があるとなっては、もう利用するほかないのだと思うのだが…。

文/柴田 喜久子


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