ユキモタシ(キノコの話)
稲刈りをはじめとする収穫の時期を終え、気が付けば山々は赤く染まり、その彼方に冬の風が近づいているのを感じるようになった。昔はこの頃になると、冬に蓄えておくぺき食糧の確保で、どの家も山へ入り木の実やキノコを採取したのであろう。
さて、そこでキノコである。我が村はなんと言っても、山菜とキノコに関しては本場である。他町村はもちろん、県外からもたくさんの人がキノコを求めてやコてくる。サワモタシ、カノカ、マイタケ、シシタケ、ヤマドリ、ナメコ…などなど、その利用している数も収量も自慢できるほど多い。ちなみに我が村で、年間を通して普通に利用されているキノコの数は、30種近くにもなる。
私はキノコが大好きである。だからこの村の人たちが食べていないキノコも採ってきては試食をする。(もちろん食べれることを確認してではあるが)ある年の秋も深まった日のこと、雑貴木林の中で白い小型のキノコの群落を見つけた。傘の表面はナメコほどではないがぬめっている。直感的に旨そうだと感じ、採取して持ち帰った。玄関の脇に桶を置いて水をはりキノコを入れた。そして部屋で図鑑を何冊も開き、早速何のキノコであるかを調べてみる。結果、「ブナヌメリガサ」もしくは「オトメノカサ」であることが分かった。どちらにしろ美味しいキノコであると書いてある。自信を持って家族に言うと、そこへ近所のおばあさんが桶の中の白いキノコを見て「あや!ユキモタシでねぇか。よく採ってきたこと。昔はよく食べたもんだぁ」今でも30種近くのキノコを利用しているとはいえ、食べ物のない時代はもっと多くのキノコを利用していたのだろう。それがいつの間にか1つ消え、2つ消え…。「ユキモタシ」と言う名前にも感動した。ずっと縞麗で優しいニュアンスである。そんなキノコがまだまだあったはずである。そんな中に、きっとこの村の救世主になるキノコが埋もれている気がしてならないのだ。
文/柴田 喜久子