エノキタケ
11月の声を聞くと、さすがにキノコのシーズンではないような気がする。そして、今年もキノコの当たり年ではなかったようだ。
ところで、「エノキタケ」をご存知だろうか。今や年がら年中スーパーで売っているこのキノコは、シイタケやナメコとともに日本人が食べる最もポピュラーなキノコであると言って良い。しかし、意外にもこのキノコの本来の姿を見たことのある人は少ない。キノコ王国であるこの村でさえそうなのだから、全国的に言えば一部のキノコマニア以外には、ほとんど知られていない。そして、エノキタケのシーズンは、なんとこれからである。
英語で「ウインターマッシュルーム」と呼ばれるこのキノコは、温度の低い雪の中でも成長を続けることができる不思議な特徴を持っている。だから、晩秋から冬にかけてよりも、むしろ、春に雪の中から出てくるほうがなじみが深い。この村では、このキノコを「ユキノシタ」あるいは「ユキノシタキノコ」と呼んでいる。そして、この「ユキノシタキノコ」が、あの「エノキタケ」なのである。栽培品と天然物の姿かたちがこれほど違うのは、本来のエノキタケに光を当てずにモヤシ状に育てたせいである。
すばらしい自然の営みをうまく利用した人間の知恵が、時として本来の姿を隠してしまい、問違った思い込みで認識されてしまうのだ。せめて、この村の人々には本来のエノキタケの姿と味を、機会があったら堪能してもらいたいものである。
文/柴田 喜久子