ツリフネソウ
沢沿いを歩くと、赤紫色のツリフネソウを見かけるようになった。名前は、花の形が帆掛け舟や、つるして使う釣花生けのなかで舟形をしたものに似ているのでついた。
花びらは、上の一枚と下の唇弁状の二枚である。袋形でしっぼが距になってクルリと巻き込
んでいるのは、花弁ではなく「がく」である。ここに蜜がある。
いつも思うのだが、植物の子孫を残すための工夫や進化は、想像もつかない部分がある。たくさんの昆虫が集まることのできる形が、早くたくさんの実を結ぶとは限らない。自分と同じ花の花粉を確実にもらうには、花の形を袋状にしたり、釣鐘状にして寄ってくる昆虫を特定することも無駄ではないのだ。
そしてもう一つの工夫は、種子の散布である。より多くをできるだけ遠くに飛ばして、子孫の生きる場所を広げようとする。
属名「インパチェンス」の「こらえきれない、我慢できない」という意味のとおり、ツリフネソウは果実が熟すと、ちょっとした刺激ではじけて種子を飛ばす。ホウセンカも仲間である。
インパチェンス属は「日陰が似合う」とは限らないし、「幸せ薄い」とは思わないが、「一年草」で「はじけて飛んだ花」であることは確かである。
文/柴田 喜久子