ダイモンジソウ

ダイモンジソウ

 ユキノシタ科ユキノシタ属の「ダイモンジソウ」の名前は、もちろん花の形からついた。「この花はなぜこんな形なのか」と考えさせられる花の一つが、「ダイモンジソウ」だ。
「ダイモンジソウ」を見ると、『大という字を百あまり砂に書き死ぬことをやめて帰り来たれり』という句の「大」の字が浮かぶ。白い花びらの「大」の字は、言葉ほど力強くはない。花弁の大きさは均一が多いと思っていると、あてがはずれる。大筆を力いっぱい溜めもせず、力強く払いもせず、形を整えて流しもせず、ポツンと離したような「大」の形だ。
  ところが最近は、園芸種も多くなり、赤やピンクと色もさまざまになった。花びらも「大」の字を思い描けない形もあって華やかだが、山の中で見慣れた「ダイモンジソウ」と同じとは思えないぐらいだ。小さなポットに入って、アスファルト舗装の上の簡単な棚に並び、強い陽射しを浴びて、思ったより安い値札のついた自生の「ダイモンジソウ」を見ると、やるせないのはなぜだろう。
  焼石岳の登山道で、沢を背景にして咲いている「ダイモンジソウ」は、実にひっそりとしている。そしてそこが似合っている。肩肘はってがんばらなくても、肩の力を抜いても、まだまだ生きていけると言っているようだ。

文/柴田 喜久子


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