その9 60は木のまっか

60は木のまっか

蛭川 高橋スミ

、あるどころさ、婆さんと息子が住んでえだっけど。
 その頃、60(歳)になれば、「木のまだ(股)」と言って年寄りを山に捨てに行かねばならなかったんだど。
 殿様の掟に従って60になった婆さんを背負って山さ登っていったども、とでも捨てることがでけねえくて、山がらまだ背負って帰ってきたけど。そして、床に間の下さ隠しておえだど。
 あくる日、息子が働きに行ったところで、
「木の丸太のどっちが根元で、どっちがうら(末)の方だがわがらねぇ」
と騒いでいだど。そごで、息子が、家に帰って、婆さんに聞いだけど、
「これなば、木を水に浮かべでみれば、下がった方ぁ根の方だべ」
と、教えでけだけど。
 その次の日、皆の居るどごろさ行って、その丸太を水に浮かべで、
「こっちが根元だ」と言ったら、
「誰がら聞いだ」と言われたので、
「実はな、婆さんを山へ捨てにいったが、かわいそうで、連れで帰ったなで、その婆さんがら聞いだ」
と言ったど。
 それから、山へ捨てる事を止めだ、という事だそうだ。
 知恵のあるお年寄りをこれからも大切にしようという事になったんだど。

とっぴんぱらりのび〜

(終わり)


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