その10 オサンコの嫁やり![]() オサンコの嫁やり 田子内 石綿 ヒデ 昔々あるけど、婆どこ亡くした爺ぁ娘三人ど暮らしてえだけど。その爺ぁ春になったば山のかげの平こさ畑おごして、キミだの、アワだの豆っこだの蒔えで暮らしてえだっけど。入梅になって、雨降りつづいだば、草っこぁおえで大変だけど。それで爺ぁ毎日毎日畑の草どりだけど。
ある時草とてだば、山のかげから、サルぁ来て、「ホーホー」て爺どさ声こかげるけど。爺ぁ知らねふりしてえだけど。毎日来て声をかけるもんだなで「山の兄、山の兄なんとがこさ来て草とてけろ」て言ったけど。そしたばサルは爺のそばさ来て、草むしり始めだけど。爺ぁサルどごもへあげで、「上手だな山の兄」とほめで三人居る内の一人を嫁こさけるごどにしたけど。それ聞いたばサルぁ、毎日来て草どりしたど。 そやて、「今日は、空もええし、一服しろや山の兄」て言ったけど。そやて休んだじき、爺ぁ、サルどさ、「なんぼ嫁こけるたて、来年の春の桜の花こ咲く頃だぞ」と言ったけど。サルぁ喜んで、手すり合わせて爺ぁどさ頼んだど。 毎日秋まで草どり、草刈りして手伝ってだけど。爺も助かって、秋の実入れもよく出来だけど。秋仕末が出来て、冬来たけど。爺ぁ嫁こけるごど心配になってきたけど。一冬苦してばかりえだけど。そしてえる内に春近じて来たけど。爺ぁ、いよいよ娘達さ言うごどになり、苦で苦でねれねえでいるようになったけど…。 爺ぁ起ぎねぇでえだば、姉のオエヂコぁ起ごしに来て、「爺さおぎでままけえ」「あんまり苦でままくでぇぐねぇ」「なんた苦あるてよ」したば爺ぁ、「娘三人えだうじ一人嫁こけるごどにしたおの、おめぇえてけねぇが…山の兄さ」したば、オエヂコごしゃで「だぁれぁ、サルの嫁なのえぎでぁぐねぇ、このばが爺ぁ」爺ぁ、泣いでえだけど。それで、こんどぁオナガコさたのんだけど。オナガコごしゃで、爺の枕元、ドンガリふみあげでえてしまたけど。 爺ぁ、困ってしまって、三番目のオサンコさたのんだけど。 姉だちやだどて行ってしまったので、「オサンコ、なんとがたのむ」 そしたば、オサンコ「なんだそんたごど、あれでえば、山の兄どさ嫁こにいぐ」といったば、爺ぁ喜んで起ぎて来て、ままくたけど。それがら爺ぁ、びゃっこずつ嫁こさやる始末して、桜の花コ咲くのを待ってだけど。 桜の花コ白くなてきたば、サルだカゴかづいでオサンコを迎えに来たけど。オサンコは「爺ぃんだらおれえてくるぞ、あんまり苦しまねぇでな」と、いってサルの嫁コになって行たけど。 サルの家では、嫁コ着いだばモヂつぎしてだけど。なんと、喜んで、にぎやがにやってだけど。モヂつげだば、「ナベもてこえ、ナベ」っていったけど… そしたば、オサンコぁー 「おらえの爺さ、ナベくせえどてくわねぇ」 「んだらミーもってこえ」 「あら、ミなばミくせぇくてでげねぇべょん」 そしたば、サルだぁ、 「ウスさ入れで、そのままにして爺さぁもてぐべぇ」といったど。 「それなば、爺さ喜ぶべ」といったら、その晩、山のサルだぁ、大ぶるまいしてにぎわい、三日目のひざなおしの日、ウスさ入れだモヂそのまま山の兄ぁ背負って、オサンコと二人?で山ごえして、爺ささぁ向かったど。 途中、深けぇ沢さ、桜の花コさいでえだけど。オサンコぁ、 「爺さどさ、一枝もってえぎでえごど」そしたば山の兄ぁ、ウス土さおろして木さのぼるどたば 「あら、爺さなば、土くせぁモヂだどてくわねぇべお」 「んだばウス背負ったままでのぼって取るんしゃん見でろ」 そして、木の上で山の兄ぁ、 「この枝がぁ、これが」と聞くどオサンコは、 「もうびゃっこ上、もうびゃっこ上」と言ったなで、山の兄はだんだん上さあがったけど。そしたば、枝っこバリバリと折れで山の兄ぁウス背負ったまま、沢の一番深(ふけ)どさドンドリ落ぢで流れでしまったど。 そして流れながら、オサンコどご思って、歌うだって流れるけど、その歌よ、 「サル沢の流れる命は惜しくないども、あどでオサンコ泣ぐばかり」って歌って流れでしまったど。 それでオサンコよ、サルの嫁にならねえで家さ帰ってきたど。 トッピンパラリのプー ※ミ=あおりふるって、ちり・からなどより分ける道具 (終わり) |










