その14 うるしめんこ

うるしめんこ

田子内 藤原 晴子

々、あるところに爺さまど婆さまど毎日山の開野畑さ行って土掘って、ソバの種まえでいだけど。
 あるとき、爺さまと婆、開野の回りの草取りさ出がでで行ったど。そしたばソバ畑の側まで行ったば、赤子の無く声が聞げできたけど。
「こんただ山の中で、赤子の声するなぁ、キツネにだまされだなだべが」
って、いいながら、泣き声のする方さ行って見だば、ソバ畑のしまこさあるうるしの木のまっかさ、めんこえ女の子えで泣えでいだけど。
爺さまと婆さまど大喜びで、
「えがった、えがった、おらどさ、わらしこえなんだがら、神様さずけでけだんだな」
「うるしの木のまっかさ、生れだんだがら、うるしめんこどつけろが…」
 うるしめんこどこ家さ連れで来て、んめえ物買ってきて、くさせだり、赤え着物買ってきて、着せだど。うるしめんこうるめんこって育てているうちに、うるしめんこも、どんどん大きくなってえあねこになって機織りするようになったけど。
「キーキーカタリ、キーカタリ、クーダコねえくても七ひろ、キーキーカタリ、キーカタリ、クーダコねえくても七ひろ」
と、今日も爺さまと婆さま、山の畑から帰ってきたば、うるしめんこは機織りやってだ音が聞げてぐるけど。
「キーキーカタリ、キーカタリ、クーダコねえくても七ひろ、キーキーカタリ、キーカタリ、クーダコねえくても七ひろ」ってな。
「うるしめんこ、うるしめんこ、今帰った。今日はアマノヒャグ遊びに来ねぇけが、アマノヒャグなば、あんまりだんじゃくなわらしで、何されるが分がらねぇ。アマノヒャグど遊んだてでげぇねぇぞ。」
 婆さま、そう言って教えでがら三日ばがりしたばアマノヒャグ来たけど。
「うるしめんこ、うるしめんこ、俺ど遊びに行ごう。」
「外さ遊びに行げば婆さまにおごられる。」
「ゲタこなば、カタカタって音っこするべのジョリこなばえがべ。」
 アマノヒャグは、その日は帰って、まだ次の日来たけど。
「うるしめんこ、うるしめんこ、俺ど長者殿の柿もぎに行ご。」
「やんかやんか、ゲタこなばカランコカランコと音するし、ジョリこなばペタペタって音するし、婆さまさ聞げばおごられる。」
「んだら、俺ぶって行ぐ。」
「アマノヒャグの背中さトゲ出でるがらやんか。」
 うるしめんこぁなんぼこどわっても、アマノヒャグ帰って行がねぇでな
「うるしめんこ、戸びゃっこ開げでけろ、うるしめんこさ、わだすものあるがら……。」
 うるしめんこは機織りをやめで、外の戸をびゃっこ開げだば、そのすき間っこさ指入れでアマノヒャグぁーがえっと戸を開けで、うるしめんこどご脇の下さはさんで、ドンドンと走って長者家の下記の木の下さおえで柿の木さわりわりど登って、柿もえでガリッとかじって、むしゃむしゃど食って、まだひとつもえでガリッとかじって
「目くそ、鼻くそ、トットットゥ」と、ベロをしかげだ柿、うるしめんこをめがげで投げてよごすもんだがら、うるしめんこぁはだしで泣きながら家さ帰って来たけど。
 そしたば、アマノヒャグぁ、うるしめんこどごぼってきて、
「うるしめんこ、遊ぼだぁ。」っていって、うるしめんこを踏みあげるんだが、ただくんだがしていじめるけど。
 アマノヒャグは、人をいじめで喜んでだけど。そしているうぢ、うるしめんこぁ死んでしまったけど。うるしめんこぁ大変なごどした。婆さまにおごられるど思って、うるしめんこのつらの皮をはいで、自分のつらさくっつげで、うるしめんこに化けで機織りしてえだけど。
 そごさ、・・・・・・

 爺さまど婆さまど山の畑がら帰って来たけど。ギーギーガタリ、ギーガタリ、クーダコあってもひとひろ、
「うるしめんこ、からだぐえでも悪んだが、機織りの音びゃっこおがしぐねぇがぁ」って爺さまいったど。
 婆さまも、変だと思って家の中さ入って、
「うるしめんこ、からだのあんべあ悪がぁ、悪らびゃっこ休むんだぁ」と、言ったば、アマノビャグぁ、婆さまに顔をみられねぇように、こそこそとねげてしまったけど。
 次の朝ま、うるしめんこぁ、なかなか起ぎで来ねんだしゃん、婆さま、
「うるしめんこ起ぎでままけ」
って起ごしたば、のそのそど起ぎできて、顏も洗わねぇでまま食うどさ来たけど。
「顏洗わねぇで、ままかれねべ」
と、言ったば、水屋さ行って、鼻の上ばりテロテロと洗ったまねして、まま食どごだけど。
「顏ずうものぁ、こうして洗うもんだ」
と、言って、てのげでゴシゴシど洗ってけだけど。
 したば、顔の皮はげで、見にくいアマノヒャグになったんだどよ。
 あんたにめごぇがったうるしめんこどご殺されだんだおの、爺さまも婆さまも、ごしゃげでやじゃねえふて、アマノヒャグどご家の周り引っぱりまわして歩いてだけど。爺さまど婆さまは泣きながら、あのあまのじゃぐどご引っぱり歩くうじ体がら、血がだらだら出で、カヤの根元っこまで赤ぐなったけど。
 それで、今でもカヤの根っこ赤ぐなってるんだどよ。
 トッピンパラリのプー

※しまこ=すみ
※まっか=枝分かれしたところ
※あねこ=むすめ
※ひとひろ=大人が両手を広げた時の長さ
※あんべぇわり=ぐあいが悪い
※やじゃね=残念だ

(終わり)


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